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新入生の皆さんへ

掲載日:2012/04/09

 ご入学された皆さん、ご入学おめでとう。


 大学をあげて、教員も職員も、そしてあなた方の先輩も、心から皆さんを歓迎いたします。


 皆さんはいま私たちに、自分に、大学に、社会にそして皆さんの仲間にどんなことを期待していますか。あれをしたい、これをしたいなど大きな希望をもち、胸を膨らませていることでしょう。そのような皆さんの夢がいっそう輝いていけるように私たちも全力で応援します。


 千葉大学には9つの学部、9つの大学院、20のセンターなどを中心にいろいろな分野の専門性が発揮され、国内のみならず、世界の大学や研究所といろいろな分野で積極的な交流を行っている文字通りの総合大学です。そして日本国内のすべての県からこられているのみならず、海外56の国・地域から1,000人を超える留学生が学んでおり、皆さんは千葉大学学生15,000人の中の大切な一員となったことを認識していただきたいと思います。


 さて、皆さんはこれからそれぞれの学部において、時には学部を横断して学ばれるわけですが、その学びから学問として、自らの思いとして、時には好奇心として、時には未知なるものへの憧れとしていろいろな意味を持ちながら、あなたの中に広い世界が生まれ、そこへ更なる挑戦をしたいという気持ちが生まれてくることと思います。その広がりは、きっとこの日本というところにはおさまりきれないということを認識されることもあると思います。そのことは現在の学問のとらえ方や、学問を生み出していく過程での作業からも、そしてそこから生まれる成果を人々に伝えるということからもごく自然な流れであると思います。分野によっては、大学よりももっと速いスピードでいろいろなことが社会で、世界で動いているように思います。皆さんは将来、いろいろな分野である分野の専門家として活躍されることが求められているわけですが、以上のようなことから考えると自らの活躍する世界は日本にとどまるものでもなく、日本人だけで展開されることにとどまらないということを考えざるを得ないように思います。このようなことを国際化というとらえ方として語ることが多いと思います。国際化ということはどのようなことを意味しているのでしょうか。どうすることが国際化ということになるのでしょうか。国際化ということにはどのようなことが必要なのでしょうか。現在の世界の経済や政治の流れ、そして学問の交流の質という点から見ても、皆さんがこれから活躍する場は日本にとどまらないということは、真実と思います。そのように考えることが求められる状況の中に皆さんは今いることを考えてください。このような流れに遅れまいとする心情が働くかもしれません。それも大切なこれからの活躍の動機になると思います。しかし、重要なことはどうすることが国際化であり、そのためにどのようなことをすることが求められているかを知ることではないかと思います。今、そのことを簡単に考える例として挙げてみます。見知らぬ国の人の前に一人で降り立ったという情景を想像しましょう。さてあなたは最初に何をするでしょう。人に何かを話しかけることをする、あるいは話しかけられるかもしれません。言葉ができなければどうすることもできないと思うことでしょう。複雑な交渉をすることや、難しい議論をするためには言葉は不可欠であることは確かです。しかし、その国の言葉を知らなければそれですべては止まってしまうでしょうか。言葉があれば全て通じ合うでしょうか。気持ちが通じ合うためには、言葉だけでしょうか。言葉がなければ意思疎通ができず、それはいつか確実に争いをもたらすということになるでしょうか。言葉の大切さを十分に認めながら、私たちは生きていくために言葉なくして絶対に通じ合える時を持てないでしょうか。言葉を介さないで通じ合うという場面にはいろいろあるように思いますが、例えば言葉が分からない赤ちゃんとの間でも意志が通じ合えるということが生まれていることを知ります。即ち、言葉だけではなく人間は通じ合える、通じ合える心があることを知ります。言葉の違った国と国のことを考える時、その国の言葉を話すことがその国を、その国の人を、文化を理解し、国際化という世界に生きることができるために必要とする全てであるかというと、必ずしもそうではないと思います。世界に起こっているいろいろな地域間の紛争を考える時、それを言葉ということで考えてみると、その解決には必死に相手の言うことを聞こうとする鋭敏な感覚で、言葉の裏側にある内的な言語とも言うべきものに到達することが求められるのかもしれません。言語を超えた理解の世界をもつことが、国際化を作り上げる原点のように思われます。


 このようなことが出来ることが、国際化ということの原点のように思われます。


 以上のようなことを願いつつ、"心から話せる国際人になれ"というメッセージを皆さんに送りたいと思います。


 先にも述べましたが、本学は総合大学であります。総合大学とは単に学部が、学部の建物が物理的に集合して存在しているということから総合という名前がついているのではなく、そこにそれぞれの学問が展開されていると同時に、それらの学問が有機的に交流がなされているということがあるからこそ、総合大学であります。皆さんはこの総合大学で学ぶという意味を十分に理解され、その環境を大いに利用して、大いにその特徴を学んで欲しいと思います。皆さんが学ぶための環境として図書館機能を新しくし、学部を超えて友人や先生方職員とコミュニケーションのとれる空間として、アカデミック・リンクという名称で施設を作りました。そして、皆さんの学ぶキャンパスは、世界に誇れる環境を整えることを誓っています。


 私たち教員、職員、そして先輩の学生はあなた方の大学生活が楽しく、意義ある毎日であるように、あなた方と共に語り、学び、働き、大学を発展させていきたいと思います。ぜひ、ともに学び、遊ぶという気持ちをいつも持ってください。


 本日入学された方々のご家族、関係する方々のご参列に感謝しますと共にお祝い申し上げ、告辞といたします。

平成24年4月9日
千葉大学長 齋藤 康