自己免疫疾患の治療につながる新たな脂質の発見
2023年08月07日
研究・産学連携
かずさDNA研究所は、東京大学、千葉大学と共同で、自己免疫疾患を引き起こす病原性Th17細胞の制御に関わる5つの脂質代謝酵素や機能性脂質を明らかにしました。
自己免疫疾患は、本来異物を排除する役割の免疫システムが、自分自身の正常な細胞や組織に対して過剰に反応し、症状を起こす疾患です。近年、この免疫システムが脂質の代謝と密接に関係していることがわかってきました。例えば、肥満になると Th17 細胞という白血球の一種が増加し、関節リウマチや炎症性腸疾患などの自己免疫疾患が引き起こされます。しかし、どのような脂質がどのような仕組みでTh17細胞を増加させるかは明らかではありませんでした。
今回、かずさDNA研究所の遠藤裕介室長の研究チームは、東京大学医学部の村上誠教授、千葉大学の中山俊憲学長らと共同で最先端の技術を駆使してTh17細胞の脂質代謝を詳細に解析しました。その結果、5つの脂質代謝酵素がTh17 細胞を増加させること、脂質の一種であるLPE[1-18:1]がTh17細胞を増加させること、さらにLPE[1-18:1]はTh17細胞で遺伝子の発現を制御する主要なタンパク質と複合体を作ることでTh17細胞の増加に関わっている可能性があることを明らかにしました。
本研究の結果、Th17細胞を利用した自己免疫性炎症疾患の診断マーカーや治療法の開発、さらに脂質代謝経路を創薬のターゲットとすることでメタボリックシンドロームの克服にも貢献することが期待されます。
研究成果は国際学術雑誌Science Immunologyにおいて、8月5日(土)に公開されました。