西川惠子名誉教授が令和4年度文化功労者に選ばれました

2022年11月02日

受賞

令和4年度文化功労者に、西川惠子名誉教授が選出されました。
文化功労者の制度は、日本の文化の発展に関し、特に功績が顕著な方々を顕彰するものです。11月4日に都内にて顕彰式が行われます。


西川惠子名誉教授

西川惠子名誉教授は、1996年4月に千葉大学大学院自然科学研究科の教授として着任後、2014年の退職時まで、"ゆらぎ"をプローブとする複雑凝集系の構造や物性の研究と、学生の指導にあたられていました。退職後も、日本学術振興会の監事を務めるかたわら、千葉大学特任教授や豊田理化学研究所フェローとしてご研究にも力を注がれ、現在に至るまで千葉大学の教育研究の発展にご尽力いただいています。

西川先生の代表的な研究内容

規則構造を持たない、液体・溶液、超臨界流体やイオン液体などの複雑凝集系を対象として、"ゆらぎ"をプローブとする研究方法や独自の装置を提案し、新しい見地に立った構造化学を構築しています。一例として、イオンだけから構成されているにも関わらず室温で液体状態をとっているために物質科学の分野で大きな注目を集めている「イオン液体」の相転移*現象の研究で、長年解明できなかった相転移時の"ゆらぎ"のダイナミクスが、西川先生の研究により直接観察できるようになりました。
この度の栄えある選出は、これまで西川先生が開発された装置や新しい方法論を通し、複雑凝集系の構造化学を次々に開拓した功績が、広く社会・文化に与えた影響を評価されたものと考えられます。

*相転移:ある物質が温度や圧力が変化することで、物理的な性質が明確に異なる状態に変化すること。たとえば氷を温めると0℃でとけて水になり、100℃で水蒸気になります。これは"水(H2O)"という性質は変わらないけれど、形(物理的な性質)が異なる状態で、固体→液体→気体への「相転移」といえます。

受賞および受章一覧

2022年4月 瑞宝中綬章
2020年11月 日本結晶学会西川正治賞「複雑凝集系と対象としたゆらぎの構造科学」 日本結晶学会
2014年9月 分子科学会賞 「ゆらぎをプローブとした複雑凝集系の分子科学」 分子科学会
2013年4月 紫綬褒章
2012年4月 文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門) 「複雑凝集系のゆらぎの研究」 文部科学省
2012年3月 日本化学会賞 「ゆらぎの構造化学の開拓と展開」 日本化学会
1998年5月 猿橋賞 「超臨界流体の研究」 女性科学者に明るい未来をの会
1988年11月 日本結晶学会賞 「X線を用いた分子性液体と柔粘性結晶の構造の研究」 日本結晶学会

[西川惠子名誉教授のコメント]

今回の選出は、「青天の霹靂」で、身に余る栄誉を頂いたと自身驚いております。
まだ、信じられない気持ちですが、選出していただき、以下の3つの点で喜びを感じました。第一に「サイエンスを楽しむ」という私の教育と研究の原点を認めていただいたこと、第二に基礎科学という縁の下の力持ち的な地味な分野の研究を評価していただいたこと、第三に女性研究者の地道な努力を認めていただいたことです。