令和2年度 千葉大学卒業式 学長告辞

  • P3230287.JPG

卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。これまで千葉大学で学び、努力と研鑽を積んで来られた皆さんに対して、千葉大学の教職員を代表し、お祝いを申し上げます。また、コロナ禍のため本式典にご列席できなかったご家族や関係者の皆様に対して、これまで長きにわたり卒業生の皆さんを支えて来られたことに、深く感謝申し上げます。

千葉大学は、「つねに、より高きものをめざして」の理念の下、高度な専門知識と倫理観を基礎に、自ら考え行動し、社会の様々な分野においてリーダーとなるグローバル人材の育成を目指しています。そして、卒業生の皆さんは、この千葉大学の教育目標にそって勉学に励まれ、ご自身の専門性を磨かれ、精神的にも大きく成長されたことと思います。また、課外活動などを通じ様々な経験をされ、たくさんの友人や楽しい思い出を作られたことでしょう。

しかし、皆さんの千葉大学における最後の1年間は新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、思うような活動が出来なかったことで、悔いを残されているのではないかと危惧しています。改めて、普通の大学生活を送れることがどれほど素晴らしいことか実感されたことと思います。また、皆さんは「今日できることを明日に伸ばすな」という教訓を、身をもって学ばれたことでしょう。

私は、これまで皆さんに、千葉大学では楽しいとか好きだと感じる分野で夢を描くようにと、お話ししてきました。その理由は、皆さんが独自の夢を育み、その夢の実現に向かって努力する中から、皆さんの持つ才能に気付いてほしかったからです。そして、今日皆さんは千葉大学を卒業して、人生の次のステップへと向かわれます。新しい世界では、千葉大学での活動の中から気づいた皆さんの才能を思う存分発揮するようにして、ご自身の天職と思える道を見出すように努力してください。そして、近い将来に天職と思える道が見つかった時には、迷わずに「ただひたすら」その道を追求していってください。必ずや皆さんの人生が充実したものとなることでしょう。そして、将来は皆さんが選んだ道のリーダーとして活躍されていることでしょう。

そこで、今日卒業される皆さんへ、リーダーに必要とされる能力の形成に向けて私自身がこれまで努力してきたことをお伝えします。一つ目は、優れた人格の形成についてです。私は、これまで生活環境が変わる度に、その新しい環境の中から自分の人格形成の「師匠」となる方を見つけるようにしてきました。優れた人格の形成にはマニュアル本などは有りません。周りにいる方たちの中から「師匠」となる方を決めて、その方から教えを乞うしかないのです。私が大学院へ進学した時には、メンターの中から師匠を見つけました。皆さんが置かれた環境の中で、尊敬できる方を師匠と決めて、その方から積極的に学ぶようにすれば良いのです。さらに日常の活動の中で、絶えず如何にして自己の人格を高めることが出来るかを考えて行動するように努力してみてください。

二つ目は、周囲との信頼関係の構築についてです。リーダーとして活躍していくには、優れた人格とともに、組織において仲間との信頼関係を築ける能力も必要となります。そこで次に、この社会的能力の育成に向けて、私が日ごろから大切にしている努力目標をお伝えします。それは「謙虚さ」と「思いやりの心」です。私は、決して自分自身の能力や地位などにおごることなく、相手の意見を素直に聞くことができる謙虚な人格であり続けたいと努力しています。この謙虚さの次にくるのが、思いやりの心を持ち続ける努力です。どのような相手にも謙虚に、思いやりの心をもって接し、常に相手の方から教えを受けるという姿勢でありたいと願っています。その謙虚さと思いやりの心が、相手の信頼を勝ち得ることにつながり、結果として皆さんのリーダーとしての活躍を強く支えてくれるでしょう。

最後に、卒業生の皆さんが、千葉大学で学んだことに自信と誇りを持って大きく飛躍し、多方面で活躍されることを心より祈念するとともに、私が日ごろから大切にしている座右の銘を、皆さんへの「はなむけの言葉」として贈ります。仏教の教えの一つである「諸行無常」です。世の中の全ては常に変化しており、永久不変なものは何もないという教えです。私は、この教えを「同じ状況は決して続かない」と解釈して、これまでの人生において、苦境に置かれた時ばかりでなく、希望が叶って喜びに満ち溢れた時などには、必ず呪文のように唱えてきました。皆さんが、これから活躍する世界でリーダーシップを発揮していく時には、決して順風満帆の時ばかりではありません。特に、辛く困難な状況に置かれたときには、「諸行無常」を思い出して、次には必ず素晴らしい時が来ると信じて、その困難に耐えて頑張ってください。

卒業生の皆さん、「困難は決して続かない、勇気をもって立ち向かえ」。そして、「絶えず謙虚に」、「謙虚に、人を思いやれ」。

本日は、ご卒業、誠におめでとうございます。

令和3年3月23日
千葉大学長 徳久 剛史