令和2年度千葉大学学部新入生に向けて(学長メッセージ)

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。教職員を代表して皆さんにお祝いを申し上げます。

始めに、皆さんが楽しみにしていた入学式を中止したことを深くお詫びいたします。新型コロナウイルスの感染が日本はもとより世界中に拡大している情勢を鑑みて、新入生の皆さんやご出席 いただく保護者等の皆様の健康を最優先させました。入学式が皆さんの人生の節目の式典であることを思うと大変残念ですが、ご理解いただきたくお願い申し上げます。そして、本来なら入学式で行う学長告辞を、本書状に代えさせていただきます。

千葉大学は、1949(昭和24)年に学芸学部、工芸学部、園芸学部、医学部、薬学部の5学部からなる新制国立大学として発足しました。現在では10学部と多数の大学院や教育研究センターを有する総合大学となっています。その間の2004(平成16)年には機構改革により一つの独立した国立大学法人となり、独自の理念「つねに、より高きものをめざして」の下に、社会の様々な分野でリーダーとなるグローバル人材の育成を目指しています。

皆さんが将来活躍しようとする社会は、情報通信技術とともに人工知能やロボット技術などの発達により産業構造が急速に変化しています。また、中国やインドを筆頭としたアジア諸国の経済的発展が加速し、あらゆる分野で国際競争が激化してきています。我が国では、超高齢化社会を迎えており、社会保障や経済・外交のあり方、さらに地震や台風などによる災害や新型コロナウイルスなどの新興感染症への備えなど喫緊の課題が山積しています。そのため日本が、これらの課題を乗り越え、世界の国々とともに持続的に発展していくには、創造的な発想力や柔軟な思考力とともに豊かな語学力・コミュニケーション能力を身に付けた若手人材の育成が強く望まれています。

千葉大学では、このような国際社会の変化に対応できる能力を身に付けたグローバル人材の育成に向けて、英語によるコミュニケーション能力向上のための教育カリキュラムを充実し、多彩な留学プログラムの開発とともに海外に留学拠点を多数設置しています。そして2016(平成28)年には海外留学を必修とする国際教養学部を開設し、グローバル人材の育成を強化させました。今年度からは新たに、全ての新入生に海外留学を必修とする「ENGINEプラン」を実施していきます。新入生の皆さんは、海外留学システムの整備された千葉大学で、国際社会で活躍するために必要とされる能力を高めるとともに、自己の存在を世界の中で捉えることができるようになってほしいと願っています。

さらに将来社会のリーダーとなる皆さんには、千葉大学という「学びの場」で知性と教養を磨き高めるようにしていただきたい。物事の本質を知り創造的に考える知的能力である知性は、未解決の問題に対して答えを見つけようとする努力により磨かれます。ですから、答えが分からない問題に対しても積極的に取り組んで、決して諦めずに答えを見つけ出そうと努力してください。また、教養を高めるということは、単に知識を増やすことだけでなく、状況に合わせて柔軟な思考や多様性に富む発想が出来るようになることです。そのためには千葉大学における学修活動だけでなく、「ENGINEプラン」を活用して海外留学を体験する中からグローバルな視点で教養を高めるようにしてください。

また、皆さんには千葉大学における活動の中から独自の夢を描いてほしいと願っています。そのための第一歩は、皆さんがご自身に内在する才能を自覚することです。皆さんが生まれながらに持っている能力である才能に基づいて夢を描ければ、その実現の可能性が著しく高まるからです。しかし、ほとんどの人は自分の才能に気付かず、またその才能を発揮する機会のないまま過ごしています。皆さんがご自身の夢を描くためにも、千葉大学を皆さん自身の才能を見つけだすための「探求の場」としていただきたいと思います。

皆さんの才能は、皆さんが面白そうだと感じたことに積極的に取り組む過程で、仲間から指摘されたり、自ら気付いたりするようになります。ですから、興味をもったことに失敗を恐れず積極的にチャレンジするようにしてください。またチャレンジの過程で進路に迷ったら、自分にとってより困難だと思われる道を選択してください。そうすればチャレンジの結果がどのようなものであれ、新たな自己の才能に気付く機会が増えるとともに、その経験のひとつひとつが、将来皆さんの価値判断の基準となるでしょう。ただし、チャレンジをするときには道徳や社会規範の遵守とともに、学生としての本分を逸脱するような行動は決して行わないようにしていただきたい。

新入生の皆さんにチャレンジの重要性を訴える私も、今から約50年前に皆さんと同じように千葉大学に入学しました。そのときに私は、それまでの内向的な自分とは異なる人格の形成を目指して、何事にもアクティブに行動するように心がけました。その自己改革チャレンジの結果、自分では気付かなかった才能を自覚できるようになりました。新入生の皆さん、千葉大学では勇気を持って自分の殻を打ち破ってみてください。そして、千葉大学におけるアクティブな活動の中から皆さん自身の持つ才能を見つけ出し、その才能を基に確固たる人生を送ることができるような独自の夢を描くようにしてください。

未来の明るい社会をつくり出していく皆さんが、千葉大学を「学びの場」として知性と教養を磨き高めるとともに、「探求の場」としてご自身に備わった才能を見つけだし、その才能に基づく将来の夢が描けることを願っています。そして千葉大学は、皆さんの精神的成長と夢の広がりに向けて最大限の支援をすることをお約束いたします。

千葉大学へのご入学、おめでとうございます。

令和2年4月吉日
千葉大学長 徳久 剛史