令和2年度千葉大学大学院新入生代表宣誓

厳しい寒さも終わりを迎え、春の訪れを感じられる季節となりました。新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるい、残念ながら今年度は入学式を行うことができませんでした。私たちのためにご準備をいただいておりました徳久剛史学長をはじめ、教職員の皆様、関係者の皆様へ感謝を申し上げるとともに、このような時期に大学院へと進学するにあたり身の引き締まる思いでおります。

さて、私は2011年に本学医学部を卒業したのち、現在まで市中病院で感染症科医として臨床業務にたずさわってきました。

ある感染症を世界から根絶するためには、適切な診断、治療、そして予防が必要不可欠です。しかし、今回の新型コロナウイルスのような新興感染症に対しては、それらが確立していないことがあります。適切な診断には臨床検体からの病原体の検出が必要ですが、PCR法も万能ではなく、それのみで全ての感染症を診断することはできません。治療薬の開発も急務です。新型コロナウイルスに対しては既存薬の応用が試みられていますが、病原微生物に特異的で人体には害の少ない新薬の開発が望まれます。予防については、公衆衛生学的なアプローチに加え、新たなワクチンの開発が期待されています。

こうした、診断、治療、予防の方法を開発するための基盤となるのが基礎研究です。多くの研究は一昼夜で成果が出るものではありませんが、日頃からの着実な研究努力の積み重ねが、今流行している、そしてこれから流行する感染症の脅威に立ち向かう力となると考えます。大学院では、日頃からの臨床的疑問点に一つ一つ取り組み、解決するための研究手法を学び、今後の医師としての人生に生かしていきたいと思っております。

感染症の研究を通して病原微生物への理解を深め、感染症の克服に少しでも貢献できるよう、真剣に、そして謙虚に、研究に取り組んでいくことをここに誓い、新入生代表の言葉とさせていただきます。

令和2年4月5日
新入生代表
医学薬学府
鷲野 巧弥