令和3年度 千葉大学大学院入学式 学長告辞

千葉大学大学院に入学された修士課程、博士課程、専門職学位課程の皆さん、入学おめでとうございます。向学心と探究心に溢れる皆さんを迎えられたことを誇りに思っています。教職員一同、皆さんの目標達成に向けて支援できることを楽しみにしています。本日は新型コロナウイルス感染症対策により本式典にご臨席できなかったご家族や関係者の皆様に対しても、心よりお慶びを申し上げます。

新型コロナウイルスの感染拡大により、今、全世界は大きな転換点を迎えています。学び方や働き方のみならず、様々なレベルで考え方を大きく変える必要性に迫られています。これらの課題を乗り越え、世界の国々とともに持続的に発展していくには、「新しい価値を創造する人材」が必要になります。そのためには、まず自分の専門とする領域で優れた研究力を身に付けることが重要です。さらに、多様な価値観と柔軟な思考力とともに豊かな語学力・コミュニケーション能力を身に付けてください。その上で、その領域の研究者としてリーダーを目指してください。

私も、今から約40年前に皆さんと同じように大学院に進学しました。私の専門は医学のなかでも免疫学という学問領域で、アレルギーやがんの研究をしてきました。その後、大学教員として30年に亘り大学院時代の研究テーマを一貫して発展させてきました。そこで、後輩の皆さんへ激励の意を込めて、私の経験から大切と思うことを二つお伝えしたいと思います。 

まず一つ目は、研究活動において最新の科学技術を積極的に取り入れることです。生命科学の発展の歴史を辿りますと、約400年前に光学顕微鏡が発明されました。初めて、細胞が見えるようになり細胞生物学が発展しました。病気を起こすコレラ菌などが見えるようになり感染症医学も飛躍的に進歩しました。その後、電子顕微鏡が発明され、ウイルスが見えるようになりました。マスコミでよく報道されている新型コロナウイルスの写真は電子顕微鏡で撮られたものです。新しい科学技術の発明がブレイクスルーとなり、その後の爆発的発展を生み出します。これがイノベーションの典型です。最新の科学技術を積極的に取り入れて、自身の研究を進めることは、科学者として非常に重要です。きっとわくわくする新たな発見があることと思います。

二つ目は、研究者となることを決めた場合、同じテーマをずっと長くやることをお薦めします。長く続けていると何回か、必ず大きな発見に出会えるものです。お約束します。また、「この事なら、何々先生に聞け。」と言われるような先生になってください。これは、研究者として非常に高く評価されていることを意味し、大変名誉なことだと思います。研究に国境はありません。早い時期に留学して、違った価値観を持つ研究者とともに研究生活に没頭すること、そして、友人を作ることをお薦めします。その友人達が、皆さんのその後の人生を豊かなものにしてくれます。

皆さんには、これから学術研究や応用研究に没頭し、将来、グローバル社会の第一線でリーダーとして活躍し、大きな新しい価値を創造する優れた人材になっていただきたいと思っています。そのためには、千葉大学の理念である「つねに、より高きものをめざして」、真摯な探究心を持ち続けて研究を行い、豊かな教養を身に付けるよう努めてください。皆さんのこれからの大学院生活が実り多きものとなり、すばらしい研究成果を挙げられることを心より願って、告辞といたします。 

令和3年4月5日
千葉大学長 中山俊憲