令和5年度千葉大学大学院入学式 学長告辞

  • 学長告辞

千葉大学大学院に入学された修士課程、博士課程、専門職学位課程の皆さん、入学おめでとうございます。向学心と探求心にあふれる皆さんを千葉大学に迎えられたことを誇りに思っています。教職員一同、皆さんが目標達成にむけてご活躍されることを楽しみにしています。また、これまで長年にわたり入学生の皆さんをご支援いただいた、ご家族や関係者の皆様に対しても、心よりお慶び申し上げます。

新型コロナウイルスのパンデミックやロシアによるウクライナ侵攻により、世界は大きな転換点を迎えています。学び方や働き方のみならず、様々なレベルで考え方を大きく変える必要性に迫られています。これらの課題を乗り越え、世界の国々とともに持続的に発展していくには、新しい価値の創造が必要です。千葉大学の大学院生の皆さんには、是非、「新しい価値を創造する人材」になって欲しいと思っています。そのためには、まず自分の専門とする領域で優れた研究力を付けることが重要です。さらに、優れた語学力・コミュニケーション能力を身に付けた上で、柔軟な思考力や俯瞰力、多角的な視点を身につけてください。その上で、その領域の研究者としてリーダーを目指してください。

私が学長に就任して2年になります。「世界に冠たる千葉大学へ」という高い目標を掲げ、研究大学として確固たる地位を築くために、研究力の強化を図っています。大学院生である皆さんは学生であるとともに、若手の研究者です。皆さんが研究に専念できる様に経済的支援や学修環境を整備することは、千葉大学が高い研究力を発揮するために必須であると考えています。千葉大学では、数多くの魅力的な取組を持つ卓越大学院プログラムに加えて、次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)、大学フェローシップ創設事業などが動いています。これらのプログラムにより、毎年約200名の博士後期課程学生が多様な経済的支援を受けています。積極的に活用してください。これらの支援は継続する予定ですので、博士前期課程に入学した皆さんは、是非博士後期課程への進学を今から考えてください。千葉大独自の「千葉大学若手研究者キャリアパス支援制度」も始め、研究者としてのスタートダッシュを支援しています。博士後期課程を修了した後も、千葉大学で研究を続けたい優秀な研究者に、特任助教などの教員のポジションが用意されています。この様に、千葉大学は全力で若手研究者を支援していきます。

さて、私は、今から約40年前に皆さんと同じように大学院に進学しました。私の専門は医学のなかでも免疫学という学問領域で、アレルギーやがんの研究をしてきました。その後、大学教員として30年に亘り大学院時代の研究テーマを一貫して発展させてきました。そこで、後輩の皆さんへ激励の意を込めて、私の経験から大切と思うことを二つお伝えしたいと思います。

まず一つ目は、研究活動において最新の科学技術を積極的に取り入れることです。生命科学の発展の歴史を辿りますと、約400年前に光学顕微鏡が発明されました。初めて、細胞が見える様になり細胞生物学が発展しました。病気を起こすコレラ菌などが見える様になり感染症医学も飛躍的に進歩しました。その後、電子顕微鏡が発明され、ウイルスが見える様になりました。マスコミで良く報道されている新型コロナウイルスの写真は電子顕微鏡で撮られたものです。新しい科学技術の発明がブレイクスルーとなり、その後の爆発的進展を生み出します。これがイノベーションの典型です。最新の科学技術を積極的に取り入れて、自身の研究を進めることは非常に重要です。AI人工知能、量子コンピューター、single cell解析など思い浮かびます。きっとわくわくする新たな発見が待っています。

二つ目は、研究者となることを決めたら、同じテーマをずっと長くやることをお勧めします。長く続けていると何回か、必ず大きな発見に出会えるものです。お約束します。私は、免疫学の研究を続ける中で、アレルギーを起こす「病原性T細胞」を発見することができました。また、「この事なら、何々先生に聞け。」と言われるような先生になってください。これは、研究者として非常に高く評価されていることを意味し、大変名誉なことだと思います。研究に国境はありません。早い時期に留学して、違った価値観を持つ研究者とともに研究生活に没頭すること、そして、友人を作ることが重要です。その友人達が、皆さんのその後の人生を豊かなものにしてくれます。

皆さんには、これから学術研究や応用研究に没頭し、将来、グローバル社会の第一線でリーダーとして活躍し、「新しい価値を創造する人材」になっていただきたいと思っています。そのために、千葉大学の理念である「つねに、より高きものをめざして」、真摯な探究心を持ち続け、高い倫理感を踏まえて研究を行ってください。皆さんのこれからの大学院生活が実り多きものとなり、すばらしい研究成果を挙げられることを心より願って、告辞といたします。

令和5年4月5日
千葉大学長 中山 俊憲