令和5年度千葉大学入学式 学長告辞
日本の四季は、生きる者すべてに優しく、時には厳しく、美しく巡ってきます。厳しい冬を越え、草木の新しい芽が空に向かって逞しく伸びる姿は、生命の力強さを感じさせます。鳥の囀りも春の暖かさの中、清々しく私達の心に響きます。800年前に、道元禅師が詠った「春は花、夏ほととぎす秋は月冬雪さえて冷しかりけり」は21世紀に生きる私達日本人にも実感できる価値観となっています。
新入生2,434名の皆さん、ご入学おめでとうございます。
さて、今年度の入学式は従来の対面での会に戻すことができました。本式典にご臨席されている新入生のご家族や関係者の皆様にも、心よりお慶びを申し上げます。この春は、新入生の皆さんにとって、人生の大きな節目となることと思います。千葉大学が、皆さんの抱いている夢や知的好奇心を十二分に満たす学びの場となることを全ての教職員が願っています。
千葉大学は、10の学部と17の大学院の他に多くの教育研究センターを有する総合大学です。千葉県下にある4か所のキャンパスに加え、一昨年4月に東京都墨田区に墨田サテライトキャンパスができました。5つのキャンパスでは、約1,400名の留学生を含む14,000名の学生が学んでいます。千葉大学はこれまでに15万人を超える卒業生・修了生を輩出し、その多くが日本のみならず世界各国で活躍しています。
歴史と伝統ある千葉大学は「つねに、より高きものをめざして」を理念に掲げており、皆さんが社会の様々な分野において輝き、グローバルに活躍できるリーダーに大きく成長されることを期待しています。
新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界は大きな転換点を迎え、学び方や働き方のみならず、生活スタイル全般について考え方を大きく変える必要性に迫られてきました。また、ロシアによるウクライナ侵攻に象徴される、新たな課題が全世界を震撼させています。これらの課題を乗り越え、世界の国々とともに持続的に発展していくには、千葉大学が目指す「課題解決型の人材」、そして「グローバル社会で活躍できるリーダー」への期待が日に日に大きくなっています。特に、優れた語学力・コミュニケーション能力を身に付け、柔軟な思考によって多様な価値観を理解できる人材が強く望まれています。入学に際して、皆さんにお伝えしたいことは「様々な課題や問題に誠実に向き合い、それを1つ1つ解決する」を目標に大学生活を有意義に過ごしてほしい、と言うことです。
さて、具体的にどのような事に気をつけて大学生活を送れば良いでしょうか?
高校までの学習との大きな違いは、大学では自分の興味に合わせて広く学修することができる点です。自由な時間が格段に増えます。何をやるか自分で決めることができます。自分の得意とする事、やりたい事を見つけて学ぶようにしてください。学部でカリキュラムは異なりますが、選択できる科目が多くあります。私は、生き物がウイルスなどから身を守る免疫というシステムについて30年以上研究してきました。アレルギーやがんの発症にも免疫が大きな役割をしています。千葉大学には、文系と理系の様々な分野で、世界的な研究をしている先生が沢山います。まず、千葉大学のHPを覗いてみてください。CHIBADAI NEXTという欄が有り、最先端の研究や面白い研究を紹介しています。世界最先端の研究に触れることができる点も大学のメリットです。是非、興味があること、自身の得意とすることを見出し、選び、皆さんの能力を伸ばしてください。最初は分からないことも多いかもしれません。周りの先生や友人、先輩に聞いてみて下さい。慌てずに、徐々に千葉大学生としての生活スタイルを形作ってください。そして、大学での学修のみならず、クラブ活動などの課外活動も、全力で取り組んでください。全力で取り組むことが重要です。それによって、自分の優れているところと能力の限界を見極め、優れている才能を大いに伸ばしてください。ただし、1つ注意しなければならないことがあります。自由度が大きくなるということは、責任が大きくなるということでもあります。社会のルールをしっかり遵守し、千葉大学生として恥ずかしくない行動をとってください。
もう一度言います。「何事においても全力で取り組んでください。そこで自分の才能を発見してください。そしてその才能を大いに伸ばしてください。」
「つねに、より高きものをめざして」
未来の明るい社会の創造を担うべく、皆さんが、千葉大学において知性を磨き、教養を高めるとともに、ご自身に備わった才能を発見し、開花させ、将来の夢が描けることを心より願い、私からの告辞といたします。
令和5年4月5日
千葉大学長 中山 俊憲