令和2年度 千葉大学大学院修了式・学位記授与式 学長告辞

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本日ここに、博士、修士、専門職の学位を授与された皆さん、おめでとうございます。素晴らしい研究成果を収め、学位を取得されましたことにお祝いを申し上げます。またコロナ禍のため、本式典にご列席できなかったご家族や関係される皆様に、これまでのご支援に対して深く感謝申し上げます。

皆さんの千葉大学における研究活動は、いかがだったでしょうか。最後の1年間は、特に新型コロナウイルス感染症のパンデミックによりキャンパスの入構制限が行われたりした時期もあり、思うような研究活動が出来なかったことで、悔いを残されているのではないかと危惧しています。改めて、研究活動が普通にできる環境がどれほど素晴らしいことか実感されたことと思います。そして、皆さんは「今日できることを明日に伸ばすな」という教訓を、身をもって学ばれたことでしょう。

今日の修了式を迎えられた皆さんは、人生の新たなスタートラインに立っています。そして皆さんは、将来、社会をリードする立場に就くようになります。そのために皆さんは、社会に出られてからもリーダーとしての素養を磨き続けていかなければなりません。特に現在のように先の見通せない時代に求められるリーダーは、変わりゆく世界の動向を見極めることのできる深い知性と、その知性に裏打ちされた優れた人格を身に付けていることが求められます。

皆さんは、大学院での研究活動を通して課題を解決するための方法を学ぶとともに、皆さん自身の知性を磨いてきました。このようにして皆さんが磨かれてきた知性は、これからの人生において何かを創り上げる時の大きな原動力になることでしょう。この「物事の本質を知り、創造的に考える能力」である「知性」を磨くという行為は、大学院を修了しても終わりではありません。これからの新しい環境の中でも、課題の解決に向けて、これまで培った知識と経験を駆使して努力することにより、皆さん自身の知性を磨き続けてください。そして、そのような活動で培ってきた知性を基に、幅広い教養を身に付けるように努めてください。

さらにリーダーには、深い知性とともに広い視野に立ってリーダーシップを発揮できる優れた人格を身に付けていることが求められます。この優れた人格は、孔子が論語の中で「七十にして、心の欲する所に従うて矩を踰えず」と述べているように、皆さんが社会でプロフェッショナルとして仕事をする過程で、皆さん自身の努力により形成されてきます。ですから将来リーダーとして活躍する時に備えて、これから仕事をする時にはいつも如何にして自己の人格を高めることが出来るかを考えて行動してみてください。

私も、これまでの人生の中で常に自己の人格を高めるための努力をしてきました。私の場合は、学部学生の時に興味をもった免疫学の研究をやりたくて大学院に進学し、その後二度の長期海外留学を経て、35歳の時に研究者の道を選択し、30年以上に亘り大学において免疫学に関する研究活動を継続してきました。そして、このような経験の中から私は、「ただひたすら」一つの道を追求することが人格形成への確かな道であることを実感しました。このことを大学院時代の恩師から「一つに秀でることは、全てに通じる」と教わりました。これまでの大学院での研究活動からその後の進むべき道を見つけた方は、その道を迷わずに「ただひたすら」追求していってください。孔子が論語の中で「五十にして天命を知る」と述べているように、50歳前後には広い視野に立ってリーダーシップを発揮できる人格が備わっていることをお約束いたします。

最後に、私が座右の銘としている言葉を皆さんに贈ります。仏教の根本思想を成す教えである「諸行無常」です。世の中の全ての事象は常に変化しており、永久不変なものはないという教えです。皆さんが、社会でリーダーシップを発揮していく時には、決して順風満帆の時ばかりではありません。諸行は無常であり、決して同じ状況は続かないのです。辛く困難な状況に置かれたら、「諸行無常」を思い出して、次には必ず素晴らしい時が来ると信じて、その困難に耐えて頑張ってください。

これまで指導してくれた教職員、共に学んだ先輩・後輩など多くの方々が、これからの皆さんの活躍を応援していることを、忘れないでほしいと思います。そして千葉大学は、これからも皆さんの将来を見守り続けます。皆さんには是非、千葉大学の同窓生として、千葉大学を、そして後に続く後輩たちを応援していただきますようお願いいたします。

千葉大学での学びによって高めた専門性と教養に自信と誇りを持って、深い知性に基づく豊かな人格を身に着けて、未来の明るい社会を作り出してゆくリーダーとして、多方面で活躍されることを心より祈念し、私の告辞といたします。本日は、誠におめでとうございます。

令和3年3月25日
千葉大学長 徳久 剛史