令和3年度 千葉市・千葉大学公開市民講座「千葉氏・禅宗・東アジア―中世房総をめぐる新たな視座―」を開催しました

2022年02月07日

社会連携

 千葉大学では、千葉市及び千葉市教育委員会との共同開催により、「千葉開府900年記念」に向けて、平成29年度から「千葉市・千葉大学公開市民講座」を開催しています。
令和3年度は、「中世」という時代における東アジアでの房総半島ならびに千葉の町の礎を築いた千葉氏の位置付けや、「禅宗」と千葉一族との関わりをテーマとして掲げ、以下のとおり開催しました。 新型コロナウイルス感染防止のため、例年よりも座席数を減らし100名の募集としましたが、定員を上回る受講希望があり、盛況な公開講座となりました。(講座の収録動画は千葉市HP「千葉氏ポータルサイト」にて令和4年3月頃視聴可能となる予定です)
千葉大学では地域の皆さまとともに、魅力ある「公開市民講座」を今後も企画・開催してまいります。

「千葉氏・禅宗・東アジア―中世房総をめぐる新たな視座―」
講演1:中世東アジア世界の中の房総・千葉氏/山田 賢(千葉大学大学院人文科学研究院・教授)
講演2:千葉一族・臼井氏と五山文学/川本 慎自(東京大学史料編纂所・准教授)
クロストーク・質疑応答 司会:池田 忍(千葉大学大学院人文科学研究院・教授)
日 時:令和3年12月11日(土)13:00~16:15
会 場: 千葉大学西千葉キャンパスけやき会館大ホール

  • 会場の様子

  • 左:講演1 右:講演2

  • クロストーク

【講座概要】
文:久保 勇(学長特別補佐[生涯学習担当]・大学院人文科学研究院)
講演1では、10世紀から13世紀におけるユーラシア大陸の西から東までの「人・モノ・カネ」の移動という観点から当時を巨視的に解説され、中世・房総半島の千葉氏もその世界的な流れの例外ではなかった、という内容でした。ヨーロッパの人口増加(人の移動)と商業化の波(モノ・カネの移動)から説き起こされ、それと呼応しユーラシアの東に「モンゴル」(元)が起こったこと、さらに元では「交鈔」=紙幣が宋代の貨幣(宋銭)に替わり流通し、不要となった大量の「宋銭」が「陶磁器」などとともに交易品として日本へもたらされ、この交易とともに「人の移動」=入元僧(220人以上)があったこと等が論じられました。入元僧らは当時第一級の国際人・知識人であり、彼らは中国大陸のみならず国内でも様々なネットワークを築き、千葉氏出身の禅僧もその動向に呼応していた可能性について言及されました。
講演2では、京都―鎌倉―房総(佐倉周辺・臼井氏)を結ぶ「禅宗」のネットワークについて、「詩画軸」における「絵」と「漢詩」の師資相承の関係から説き起こされ、禅僧のネットワークが「禅宗」の交流のみならず文化活動を伴って繋がっていたことを具体的に解説されました。「漢詩」において千葉・臼井氏出身の道庵曾顕が高峰顕日(仏国国師の法系)にあり、さらに道庵周辺の具体的なネットワークを浮かび上がらせる史料として「道庵和尚伝」(『千葉臼井家譜』)を取り上げられました。父・臼井興胤の意向によって出生時から無礙妙顕の弟子とされたのは一族の繁栄を企図した側面があったこと、また道庵曾顕開山の臨済宗寺院が印旛沼周辺に集中していたのは「水運」を利用した学問的繋がり(鎌倉―臼井―下野・足利学校―常陸・佐竹氏周辺)を示唆するもの等の貴重な意見をうかがうことができました。
講師両名によるクロストークでは、共通の問題として「中世日本社会における禅僧の位置」が取り上げられ、禅僧が「中国の新たな知」を伝える存在として社会的に高い価値をもっていたこと等が確認されました。その他、参加者の皆さまからの質問は質問用紙にて受け付け、終了時間まで活発な議論がなされました。