遺伝性脳小血管病を促す変異タンパク質蓄積の機構解明〜NOTCH3 CADASIL変異型タンパク質は糖鎖修飾によって蓄積する〜
2024年10月17日
研究・産学連携
千葉大学大学院薬学研究院の伊藤素行教授と鈴木翔大日本学術振興会特別研究員PD(受入機関:千葉大学)、静岡県立大学大学院薬学研究院の竹内英之教授、名古屋大学糖鎖生命コア研究所の塚本庸平日本学術振興会特別研究員PD(受入機関:名古屋大学)と岡島徹也教授らの研究チームは、遺伝性脳小血管病CADASIL注1)の原因として知られるNOTCH3注2)変異型タンパク質の蓄積に、糖鎖修飾酵素Radical fringe(RFNG)注3)が寄与することを世界に先駆けて発見しました。この結果によって、糖鎖修飾注4)を介した新たな病態機構の解明が進み、CADASILの有効な治療法の確立につながることが期待されます。
本研究成果は2024年9月18日に国際学術誌The Journal of Biological Chemistryで公開されました。
注1)CADASIL: 指定難病「皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症」の英語略称。脳の小さい血管が障害されることで脳卒中(脳梗塞と脳出血)を繰り返して、認知症を発症する。
注2)NOTCH3: 細胞膜に存在する受容体タンパク質Notchの一種。細胞外および細胞内領域によって構成される。血管ではペリサイトに多く発現して、細胞の増殖や生存を促す役割を果たす。
注3)Radical Fringe(RFNG): Notch受容体に結合した糖鎖を伸長するタンパク質で、細胞間のコミュニケーションを調節する。このプロセスは、細胞の成長や分化に重要とされている。
注4)糖鎖修飾: グルコースなどの糖が結合して鎖状になった糖鎖がタンパク質に付加されること。糖鎖修飾はタンパク質の安定化や細胞間認識、タンパク質輸送などに関与し、細胞の機能調節に重要で、異常があると病気の原因にもなる。