開発の遅れているN型有機半導体の性能向上に本質的な一歩―電子の通り道の直接観測でポーラロン形成を証明―

2022年07月19日

研究・産学連携

千葉大学大学院工学研究院の吉田弘幸教授、融合理工学府博士後期課程3年生 佐藤晴輝、博士前期課程2年生 山田陽太、Syed A. Abd. Rahman博士(2022年博士後期課程修了)、筑波大学数理物質系の石井宏幸准教授らの共同研究チームは、有機半導体の電子伝導特性の解明に不可欠となる伝導帯のエネルギーバンド構造を世界で初めて観測することに成功しました。
研究チームは、10年がかりで角度分解低エネルギー逆光電子分光法を開発し、ペンタセンという有機半導体の伝導帯を測定しました。その結果、流れる電子が有機半導体の分子を変形させてポーラロンが形成されるため、電子が流れにくくなることが分かりました。
本研究成果は、長年の謎であった有機半導体の電子伝導機構を明らかにし、N型有機半導体5)の性能を本質的に向上させるための大きな飛躍です。
本研究成果は、科学誌Nature Materialsに2022年7月18日(中央ヨーロッパ時間)付で掲載されました。

  • ペンタセンの中のポーラロン。有機半導体を流れる電子がペンタセン分子を変形させてポーラロンを形成する。