腎臓の糖新生を制御する臓器間ネットワークを世界に先駆けて解明! ―ケトン体が腎臓による血糖、酸・塩基バランスのコントロールに一役―
2024年04月22日
研究・産学連携
千葉大学大学院医学研究院 波多野亮助教、三木隆司教授、田中知明教授、平原潔教授、薬学研究院 佐藤洋美准教授らの研究グループは、筑波大学医学医療系 島野仁教授、富山大学和漢医薬学総合研究所 中川嘉教授の研究グループとの共同研究により、腎臓の糖新生注1)を制御する新たなメカニズムの解明に成功しました。
研究グループは、空腹時の血糖維持に関わる腎糖新生の調節に肝臓で合成されるケトン体注2)が、空腹時の代替エネルギー源としてだけでなく、生理活性物質として血糖調節や血液の酸性化(アシドーシス)を防ぐという重要な役割を担っていることを新たに発見しました。
ケトン体が、臓器間(肝臓―腎臓)の代謝機能をつなぐメディエーターとして働くことで生体の機能恒常性の維持に関わる重要な物質であることを世界で初めて明らかにした本研究は、腎臓の糖新生を標的とする新たな薬物等の開発により肥満症や糖尿病の治療法の開発に革新的な道を拓く可能性があります。
本研究成果は、令和6年4月9日付で国際学術誌Molecular Metabolismにオンライン掲載されました。
注1) 糖新生: 飢餓時に不足するブドウ糖(グルコース)を補うために、アミノ酸や乳酸、グリセロールなどの異なる栄養素から糖を作り出す経路。G6pc1がコードするG6PaseやPck1がコードするPEPCKが律速酵素として働く。
注2) ケトン体: 飢餓時に不足したブドウ糖の代わりに、代替エネルギー源として遊離脂肪酸から合成される化合物。生体ではβ-ヒドロキシ酪酸(BHB)が最も多いが、アセト酢酸、アセトンと合わせた3分子がケトン体と総称される。