島中がメスばかり ―昆虫の細胞内に生息する細菌が宿主の野外性比を急速にメスに偏らせる過程を世界初観測―
2024年05月21日
研究・産学連携
昆虫の細胞内に生息する細菌の中には、宿主の生殖を操作するものがいることが知られています。このような細菌は、ほとんど感染性がなく、母親から子に世代を越えて伝播しながら生き延びています。ところが、オスに伝播した場合はそれ以降の世代に伝播することができません。このような背景から、宿主昆虫の生殖を操作することによって自身の繁栄をより確実にする細菌が現れたと考えられています。
福井大学学術研究院工学系部門の宮田真衣助教と千葉大学大学院園芸学研究院の野村昌史教授、農業・食品産業技術総合研究機構生物機能利用研究部門の陰山大輔グループ長補佐らは、宿主をメスのみにする細菌ボルバキア(注1)が、石垣島のミナミキチョウ(Eurema hecabe)において急速に広まる過程を観測しました。その結果、オスとメスがほぼ1:1で存在していた状態から、93.1%がメスといった著しくメスに偏った状態に、4年間で変化したことを明らかにしました。ボルバキア等の細菌が引き起こす生殖操作によって子がメスのみになる現象はいくつかの昆虫で報告されていましたが、今回、このような細菌が野外の宿主集団内で急速に広まり、短期間で宿主の集団性比を極端に歪めるまでに至ったことを世界で初めて示しました。集団性比の劇的な変化は、進化、生態、行動、ゲノムなど、宿主の様々な側面に大きなインパクトを与えると考えられます。
(注1)
ボルバキア…昆虫で広く確認されている細菌。細胞内に存在し、昆虫の生殖を操作することが知られている。