性犯罪に対する偏見を測定する日本語版尺度を開発 〜日米および世代における受容度の違いを比較検証〜

2024年08月05日

研究・産学連携

 千葉大学子どものこころの発達教育研究センターの佐々木利奈特任研究員とセンター長の清水栄司教授は、レイプ被害者、加害者、レイプ行為そのものに関する誤った信念や固定観念(レイプ神話注1))をどの程度受容しているかを測定できる「REAL尺度注2)」の開発者であるテキサス大学のレベッカ・ハーネルピーターズ氏と共同で、日本語版REAL尺度を開発しました。
 本研究では、開発した日本語版REAL尺度を用い、18歳から65歳までの同意を得た人を対象に匿名でWebアンケートを行い、日本人がレイプ神話をどれほど受容しているか(Rape Myth Acceptance) を測定しました。その結果、レイプ神話を強く信じる3つの傾向(①女性よりも男性、②他の世代よりも若い世代(18~29歳)、③アメリカでの実施者よりも日本での実施者)が示されました。また日本人のレイプ神話は、1.性犯罪行為を過小評価する心理、2.暗黙の同意があったので性犯罪ではないと評価する心理、の2つのグループに分けられることも明らかになりました。なお、本研究における男女の定義は、回答者自らのジェンダーアイデンティティを基本としています。
 
 本研究成果は2024年7月30日に、国際学術誌 Journal of Interpersonal Violence に掲載されました。今後、性犯罪に対しての偏見を減らし、性犯罪被害者が被害申告をしやすい社会の構築に寄与することが期待されます。


注1)
レイプ神話 (Rape Myth): 性暴力の被害者を非難したり、加害者を擁護したりする誤った信念や偏見のこと。1970年代のフェミニズム運動の頃から使われている用語。

注2) REALRape Excusing Attitudes and Language尺度:Hahnel-Peeters と Goetz が2022年に作成したレイプ神話受容度を測定する、性暴力を言い訳にする態度と言葉の尺度。