抗菌ペプチドは細菌の細胞内にどのように取り込まれるのか?―細菌の膜輸送体SbmAの立体構造の解明―

2021年09月09日

研究・産学連携

岩田想 京都大学大学院医学研究科教授、野村紀通 同准教授、小笠原諭 千葉大学グローバルプロミネント研究基幹 特任准教授(元 京都大学医学研究科研究員)は、Konstantinos Beis 英国・インペリアルカレッジロンドン グループリーダー、稲葉理美 同日本学術振興会海外特別研究員(高輝度光科学研究センター研究員兼任)、Jonathan Heddle ポーランド・ヤギェウォ大学 教授らと共同で、細菌の膜輸送体タンパク質SbmAの精密立体構造を解明しました。
自然界の生存競争において、ある種の細菌は多種多様な化学構造をもつ抗菌ペプチド類を分泌し、その作用によって競争相手である近縁種の細菌の増殖を抑えて生存競争を有利にする戦略をとっています。SbmAは、近縁種細菌の細胞内に抗菌ペプチド分子が入っていく際に「取り込み口」として働く膜タンパク質です。
本研究では、SbmAが多種多様な抗菌ペプチドを細胞内に輸送するメカニズムを分子レベルで理解するために、SbmAの精密立体構造を可視化しました。今回得られた立体構造情報は「どのような化学構造をもった化合物ならばSbmAによって細菌細胞内に有効に取り込まれるか」という問題を考える重要な手がかりになります。この知見を応用して、病原細菌の増殖抑制に効果がある新しい抗菌ペプチドの研究開発が進むものと期待されます。
本成果は、2021年9月9日(日本時間)に米国の国際学術誌「Science Advances」にオンライン掲載されました。

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    SbmAの立体構造