植物球根がヒト病原真菌の薬剤耐性を多様化させる温床になっている可能性を確認

2021年09月02日

研究・産学連携

 筑波大学生命環境系 萩原大祐 准教授、千葉大学真菌医学研究センター 高橋弘喜 准教授の研究チームは、日本で販売されているオランダ産チューリップ球根から分離した、8株のアスペルギルス・フミガタスのゲノム解析を行いました。その結果、同一の球根から分離したものであっても、アゾール薬耐性に関わる遺伝子において多様な変異パターンが確認されました。その一方で、染色体ゲノムの配列が部分的に重複していることなども分かり、これらの菌株間で交配のようなゲノムの組換えが生じたと考えられます。このことは、植物球根が、病原真菌にとってゲノムの多様性を獲得する場として機能している可能性を意味します。
肺感染症を引き起こす真菌アスペルギルス・フミガタスは、治療が遅れると命に関わる病原性の強い病原菌です。近年、この治療に用いられるアゾール系抗真菌薬に対して耐性を示す株が多数報告されており、その広がりが注視されています。今後はより詳細な実態調査と対策が必要になると考えられます。