ミトコンドリアにバレル(円筒)型膜タンパク質を組み込む仕組みを解明

2021年01月07日

研究・産学連携

京都産業大学、東京大学、フライブルグ大学、産業技術総合研究所、千葉大学の研究チームは、ミトコンドリア外膜の(膜タンパク質複合体)SAM複合体について、構成サブユニット(タンパク質)が異なる二つの複合体の高分解能立体構造をクライオ電子顕微鏡解析で決定しました。SAM複合体が構成タンパク質を入れ替えながら、基質となる膜タンパク質に円筒形(バレル型)の形を作らせつつ外膜に組み込む、新規の仕組みを明らかにしました。
ミトコンドリア外膜には小分子やタンパク質の通り道を提供するバレル型構造の膜タンパク質(β-バレル型膜タンパク質)が存在し、ミトコンドリアの機能に必須ですが、それらの膜タンパク質がどのようにバレル型をつくって膜に組み込まれるのかはこれまで不明でした。細菌の外膜にも進化的に近い組み込み装置がありますが、それとは組み込みの仕組みがかなり異なることもわかりました。
ミトコンドリア外膜の機能に必須のβ-バレル型膜タンパク質組み込みのメカニズムの解明により、ミトコンドリアの膜タンパク質組み込みやβ-バレル型膜タンパク質に関連する病気の治療法の開発や、ミトコンドリア膜へのタンパク質組み込みの効率を制御することで老化を防ぐなどの可能性が開けることが期待されます。
本研究成果は、英国科学誌「Nature」オンライン版に2021年1月6日16時(ロンドン時間)付で掲載されました。

  • クライオ電子顕微鏡を用いて決定されたSAMdimer複合体の構造
    SAMdimer複合体はSam50が2分子、Sam35とSam37が各々1分子ずつから構成される。左は膜面の横から見た構造、右はサイトゾル側から見た構造。