治療薬を包含した高分子ミセルの相互作用場を解明!優れた薬物送達のメカニズム理解への新手法

2021年03月19日

研究・産学連携

千葉大学大学院理学研究院の森田 剛 准教授、大学院医学薬学府博士課程3年の陳 子喬 氏、修士課程1年の向出 彩華 氏、大学院薬学研究院の東 顕二郎 准教授、森部 久仁一 教授、立命館大学生命科学部の今村 比呂志 助教、岡山大学異分野基礎科学研究所の墨 智成 准教授の研究グループは、優れた薬物送達作用を持つドラッグナノキャリアとして知られる高分子ミセルが、治療薬を取り込んだ状態での、システム中の相互作用場の解明に成功しました。
これにより、従来の技術では困難であったナノキャリア間の集合や分散の状態を正確に把握することができるようになり、システムが特徴的に示す徐放性などの薬物送達作用の基本的メカニズムを理解することが可能となりました。本研究で用いた手法は、複雑な環境でのその場観測が可能であり、各種薬物への適用や体内条件での知見を得ることができるため、今後のドラッグナノキャリアの研究において、難溶解性薬物の薬理効果を高め、治療薬投与における身体的精神的な負担を軽減する技術の開発などへの貢献が期待されます。
本研究成果に関する論文は、2021年2月10日に米国化学会誌Nano Lettersにて出版されました。

  • (左)高分子ミセルの概念図
    (右)本研究で初めて明らかとなった高分子ミセルや治療薬を包含した高分子ミセルの相互作用場(上図グラフ)。下図は相互作用の様子をあらわしており、互いに接近した状態 (赤線は3wt%でのミセル間の相互作用データ)