第23回千葉大学移民難民スタディーズ研究会 報告
「地域における外国籍住民への支援と中間支援組織の役割」
2023年10月19日(木)16:00〜17:30
オンライン開催
講師1:三本 裕子(日本NPOセンター)
講師2:鍋嶋 洋子(ちば市民活動・市民事業サポートクラブ(NPOクラブ))
コメント:白谷 秀一(NPO法人多文化フリースクールちば)
報告概要
在留外国人の増加に伴い、市民による外国人住民への支援は日本語学習支援にとどまらず福祉や教育などの諸領域へと広まっており、その活動形態も多様化している。千葉県においては、1980年代よりボランティアによる外国人住民への日本語支援が精力的に取り組まれ、今日ではNPO法人格を取得し、継続的に教育支援事業を担う団体も出てきている。市民活動がボランティアから事業へと展開していく際に大きな助けとなるのが、市民社会を担うNPOに対し経営・運営支援を行う中間支援組織の存在である。
日本NPOセンターとちば市民活動・市民事業サポートクラブ(NPOクラブちば)は、外国につながる子どもたちの高校進学支援を行うNPO法人多文化フリースクールちばに対し、2020年ごろから伴走型の運営支援・ステップアップ支援を行ってきた。第23回研究会は、日本NPOセンターの三本裕子さん、NPOクラブちばの鍋嶋洋子さんにお越しいただき、2つの団体が多文化フリースクールに対し、具体的にどのような支援を行ってきたのかを伺う機会とした。はじめに日本NPOセンター三本さん、NPOクラブ鍋嶋さんよりご講演をいただき、支援を受けた立場から多文化フリースクールちば代表の白谷秀一さんにコメントをいただいた。
NPO法人多文化フリースクールちばに運営支援が入るきっかけとなったのは、コロナウィルスの流行による対面活動の制限という危機であった。それまでは対面中心で行ってきた教室運営を遠隔で行う必要が生じたことを契機に、日本NPOセンターを通じ、遠隔でも資料共有できる環境整備や会計フローの可視化、運営委員会の立ち上げサポート、組織基盤強化のための助成金申請サポートを受けてきた。特に、IT環境の整備においては、ITを生業とするプロボノによる支援を受けることができ、情報発信の窓口となるHP改修なども行うことができた。
日本NPOセンターからの支援に引き続き、現在、多文化フリースクールに伴走しているのがNPOクラブちばである。鍋嶋さんのご報告では、支援の初期(2023年3月)に実施したスタッフアンケートの結果や、それを踏まえて2023年6月に実施された「地域円卓会議」の様子、現在制作中のフリースクール10年史の紹介があった。今後の展望として、組織の基盤を固めていくために中期計画作成の提案もあった。
今日までの多文化フリースクールちばと2つの中間支援組織との歩みは「HPを改修したいというところからスタートした」と代表の白谷さんは振り返る。その頃の多文化フリースクールは日々直面する課題に対応するだけで精一杯であり、組織基盤の強化や安定的な運営に向けた体制づくりについては後回しにせざるを得ない状況にあった。コロナ流行を契機に2020年ごろから2つの支援組織によるステップアップ支援を受けることとなったが、中でも大きな変化となったのは、運営委員会を定期的に開催するようになったことだという。白谷さんによれば「内部の意思統一を図る機会を設けられるようになったことで、多文化フリースクールちばは寺子屋から学校へと前進できた」という。
フロアからの質疑ののちに、千葉大学国際教養学部開講授業「NGO/NPO論」受講者からの質問にもお答えいただく時間が設けられた。「中間支援組織としてNPOの運営支援に入る際に大切にしていることは?」という質問に対し、三本さん、鍋嶋さんからは「組織を大きくすることよりも、スタッフがイキイキと活動できるようになることを大事にしている」という回答があった。地域共生課題の解決を目指す活動をボランティアではなくNPOとして活動することには一定の責任や成果も求められるが、NPOとして活動することで、同じような団体とつながることができるというメリットもある。市民活動を持続可能な活動へと展開していくためには組織基盤をきちんと整備していくことが重要であり、そのための外部資源の調整を担うことができる中間支援組織の役割は大きい。多文化フリースクールちばの場合は、スタッフの多くが高齢者であり、組織のIT化に大きな課題があったが、外部人材を通じて課題を乗り越えていくことができた。また、外部支援が入り他者の視点を得ることで、客観的に組織の課題を交通整理できることも大きなメリットであると感じた。
司会・記録:相良 好美(千葉大学大学院社会科学研究院 特任研究員)