第20回 移民難民スタディーズ公開研究会 案内
韓国の移民政策の展開と課題
日時:2022年9月23日(祝)10:00~12:00
オンラインZoom
言語:日本語と英語 (通訳なし)
司会:小川 玲子(千葉大学社会科学研究院)
報告者:李 潓珍 博士(イ・ヘジン)(慶南研究院)
Dr. Sohoon Yi (Assistant Professor, Dept of Sociology, Kyungpook National University)
報告概要
1990年代に人手不足を抱えた韓国では日本の技能実習生制度に類似した産業研修生制度を導入し、外国人労働者の受け入れを開始した。しかし、人権問題が多発したことから、2003年に外国人雇用法が成立し、2004年に雇用許可制へと転換した。雇用許可制では労働市場テストや雇用主の変更が条件付きで認められている。さらに、外国人の受け入れ環境の改善を目指した2007年の在韓外国人処遇基本法や2008年には多文化家族支援法が制定され、2000年代には外国人受け入れ体制が整えられてきた。多文化家族支援法では国際結婚の家族を対象とした多文化家族支援センターが全国に建設され、移住女性に対する韓国語教育や経済的自立のための就労支援が行われ、夫や子どもたちも支援対象となっている。本報告では10年以上が経過した雇用許可制と多文化家族支援政策について概観し、制度上の課題や限界を議論する。
プログラム
報告1:韓国における雇用許可制の展開
李 潓珍 博士(イ・ヘジン)(慶南研究院)
韓国では、2003年に「外国人勤労者の雇用等に関する法律」を制定し、2004年から雇用許可制によって、外国人労働者を受け入れている。2022年の一年間、雇用許可制で受け入れる外国人労働者は59,000人である。韓国の雇用許可制の導入時期から今日までの流れを説明する。導入規模の変化、雇用許可制を利用しようとする雇用主及び勤務を希望する外国人の申請手続きなど制度の実際的運用に焦点をあて検討する。雇用許可制の短所として指摘されている事業場変更の制限などを含め、議論する。雇用許可制で働いている外国人労働者の現状を踏まえて(実態調査の結果を用いて)、雇用許可制の可能性と限界について議論する。
プロフィール
韓国釜山出身。1998年来日し、神奈川シティユニオン(コミュニティ・ユニオン)と寿町をフィールドとして研究し、筑波大学人文社会科学研究科にて博士号取得後、2011年帰国。日本のでの修士課程と博士課程の間は、韓国と日本の移住民関連NGO及び労働組合のメディエーターとして活動。釜山大学校社会科学研究院と蔚山女性家族開発院での勤務後、現在は慶南研究院の研究委員として勤務。研究分野は女性、家族、児童、青年、人権、移住、多文化社会、動物福祉など。最近の日本関連の論文は、「高齢移住民のケアの資格-神戸定住外国人支援センターの高齢移住民支援事例を中心として(2021)」、「日本の移住民動向と排外主義現象(2019)」「日本の外国にルーツをもつ青少年組織すたんど・ばい・みーの当事者性の構成(2018)」など韓国で発刊。
報告2:Overview of Marriage Migration in South Korea
Dr. Sohoon Yi (Assistant Professor, Dept of Sociology, Kyungpook National University)
South Korea’s “multicultural (damunhwa)” transformation since the mid 2000s has been state-led and focused on “multicultural” families that are formed by cross-border marriages between South Korean men and foreign women. Multicultural Family Support Act (MFSA) was legislated in 2008 to support multicultural families and Multicultural Family Support Centers have been established across the country since then. While the term damunhwa took many by surprise given the prevalence of ethnic nationalism in South Korea, researchers and activists have criticized the policies for being Korea-centric and assimilationist. This presentation critically reviews fourteen years of policy development since the legislation of MFSA and its social implications including the achievement of the women’s rights movement and the recent backlash against multicultural policies.
Profile:
Has obtained Ph.D. in Sociology, University of Sydney. Her research interest is Gender and migration, informal labour, transnational feminism, affect, socio-legal studies, ethnography, globalisation, politics of informal economy. Has published widely in peer-reviewed journals including “Penalizing ‘Runaway’ Migrant Wives: Commercial Cross-Border Marriages and Home Space as Confinement” Citizenship Studies 2021 : 25 (7) : 918-935, “Suspicious Motherhood: Maternal Labor and Marriage Migration in South Korea”, Social Politics 2021 : 28 (1) : 71-93, Piper, Nicola and Lee, Sohoon (2016) “Marriage Migration, Migrant Precarity, and Social Reproduction in Asia: an Overview”, Critical Asian Studies 48 (4) : 473-493 etc.
参加申し込み先
お申し込みの受付は終了いたしました。
連絡先
小川玲子(千葉大学社会科学研究院)
MAIL:reiogawa@chiba-u.jp